計良光範さんの「アイヌの世界 ヤイユーカラの森から」の中に、
葛野エカシさんの言葉が記載されていた。
「人間の一番身近にいて、一番大きな力をもっているのは火の神様だ。
心が広くて優しい神様なので、我々が願ったり祈ったりすること、
火の神様にさえ言えば、あとは彼女がほかの神々に
全部それを伝えてくれるんだ。
だけど、これほど恐ろしい神もほかにはいないんだよ。
人間をあたためてもくれるけれど、火傷をさせることもある。
煮炊きを助けてくれるけれど、火事になって全てを灰にしてしまうこともある。
だから、いつも火の神様には敬意をはらい、丁重に扱うのだよ」
うさぎ山プレイパークでの、ある出来ごとを思い出した。
焚き火を囲んでいるときに、小さな子供が、火の魅力に心を奪われた。
紙を燃やしたり、枯れ葉を燃やしたり、だんだん火に興味を抱いていた。
そして、ついには、赤い炭を火鋏でつかみ、外に持ち出したのです。
火のついた炭を持ちだした子供は、輪の中の大人に
しっかりと叱られることになった。
大人と子供が見守っている、焚き火の輪の中では、
人々に暖かさをもたらしてくれる炎も、
その輪から持ち出したとたん、火事という災難をもたらしてしまう。
そのような火の恐ろしさを感じることなく、
現代の子供たちは育っているように感じる。
人が火に敬意をはらい、畏怖の念を持って、大切に接していないと、
大きな間違えを犯してしまうように思う。
行儀の良さも必要だけれど、もっと大切な、生きるために必要な叡智を、
子供たちが受取ることのできるチャンスを創ってあげることも必要と、
私は思っている。
長老の言葉の中にある大切なメッセージを、
どのように未来の子供たちに伝えていけば良いのだろうか。
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